2017年5月20日土曜日

第4回 日本臨床作業療法学会 in 仙台

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仙台で牛タン食べたかったのですが,澤田さんの「東京で食べられるから」というコメントに妙に納得してしまったtomoriです.確かに仙台で牛が飼育されたわけじゃないんだろうから東京でも一緒なんかな〜とか,遊び心のないことを考えてしまうわけです...



さて,第4回の日本臨床作業療法学会 in 仙台です.

今回も全国各地から310名の参加がありました(学生が60名くらい?).仙台で開催したのは,東北のOBPを盛り上げたい,という齋藤大会長の熱い思いがあったからです.



というのも,実は会員の数で東北が一番少なかったんですね.そこを「繋がる」をテーマに310名も集めたということは大成功だと思います.実行委員の皆様の裏の努力があったと思われます.齋藤さんらしく、とても丁寧で上品な学会でした.お疲れさまです.ありがとうございました.



演題は76でした.今年も参加者の3割ほどは発表という「超参加型の学会」です.その反面,内容は事例や実践報告がほとんどで,前後比較研究が1件,横断研究が4件,質的研究1件がでした.研究的な内容が少ないです.もちろん事例報告をなめちゃいかん事は先日ブログでも書きましたが、学会として種類が少ないのは物足りなさを感じます。

事例報告を研究としてどう発展させるのか,それは大して難しい話ではなくて,事例報告から着想を得た仮説を検討していけばいいだけです。

効果があるのか調べたければ例数を増やしてみる,なぜ変化があったのか調べたければメカニズムを検証する,他の療法士でも出来るようにしたければ介入や評価法の開発研究する、などなど.そんなに難しく考える必要はありません.本学会では研究法セミナーなども開催していますので,ぼちぼち種類も増えてくるだろうと思っています.

もちろん、今回はとりあえず発表する事が目的だった方は、次も発表する.発表するまで色々調べるプロセスが大切です。もう少し文献を読んでみよう、新しい方法と組み合わせてみよう、職場の仲間や後輩とやってみよう、などなど。小さくても良いから目標を持って挑めるといいですね。






抄録からOBPで用いられそうな検査ツールなどを検索してみました(重複有り)

ADOCfor schoolfor handを含む19演題
COPM:9演題
MAL:8演題
VQ:7演題
AMPS:4演題
CAOD:4演題
人間作業モデル:3演題
OSA:3演題
MTDLP:3演題
CEQ:1演題
OBP2.0:1演題

意外にADOC多かった(笑)ま、いろいろあるのが本学会の良いところです.近年ツールを使った事例報告が増えています.実践の手続きや介入前後の変化を明確化するためにも良いことだと思います.

ADOCもよく使っていただいて嬉しい限りです.ADOCを使いました!という報告もぼちぼち終焉で,普通にADOCは使い,そこから何かを生み出している報告へと移行しているような気がします.ありがとうございます。



講演です.

東北福祉大学 佐藤善久先生
作業ベースとボトムアップの実践と教育 ~WFOT教育最低基準の見直しから見る作業療法のあり方~ 

教育基準のお話がメインと思っていたのですが,佐藤先生の考えるOBPに関する「激アツ」なお話から,アメリカに留学された際のエピソードも含まれていました.また,WFOTも「作業」のことを教えるように,というお達しがあるようです.京極真先生のブログにも紹介されていますので,ぜひ原文も含めて参照してください.日本でどのように取り入れるのか,作業療法士協会で検討中だそうです.

神奈川県立保健福祉大学 長谷龍太郎先生
Art &Science 作業療法の現代化を振り返る

やはり作業療法においてクリニカルリーズニングの第一人者なだけあって,Artとは何なのか,そしてArtをどうscienceにもっていくのかの説明が圧巻でした.そして,何事もクライエント中心,臨床を大切にしています.その考えは僕もちゃんと受け継いで行きたいと思いました.最後に,Artをscienceにする一手法として,ご自身で開発された絵コンテ法を紹介されていました.これは自らの臨床技能を高めるために他者をディスカッションするにはとても有用だと思います.聴講された方は,ぜひ試してみてほしいですね.





最優秀演題は北海道の作間さんでした.僕もたまたま演題を聞かせていただきましたが,精神科でクライエントと看護師の信念対立をOBP2.0などの手法を使い,OTが両者の協働を促しつつ,ADOCで立案した目標も実現した,という内容でした.精神科OTに悩む時期もあったとシンポジウムで発言されていましたが,やはりそんな時に道を示してくれるのは,クライエント,そして仲間だと思います.これからも良い発表を期待したいと思います.



第5回は福岡です.そして,大会長は僕が務めることになりました(苦).そしてCOT初の「国際学会」にする予定です.テーマはAdvanced Occupation-based practiceということで,世界のOBPをシェアしましょうという主旨で行いたいと思います.

詳細は追ってご紹介していきたいと思います.どうぞよろしくお願いいたします.
演題もってご参加くださいね.




ではでは.最後まで読んでくださり,ありがとうございます.








2017年4月23日日曜日

日本臨床作業療法研究をそろそろ投稿の選択肢にいれませんか?

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娘二人との生活も、どーにかこーにか2週が過ぎようとしています。tomoriです。


さて、日本臨床作業療法学会の学術誌に、日本臨床作業療法研究というものがあります。

一応僕が編集長を務めさせていただいており、自分で言うのも何ですが、この雑誌はオススメです。投稿が増えると仕事も増えるので本当はあまり教えたくないのですが(笑)、もっと宣伝した方がいいと周りに言われるので、隠れた名店的な感じでご紹介したいと思います。

日本臨床作業療法研究はISSN (International Standard Serial Number: 国際標準逐次刊行物番号) 取得済で一応ご自身の業績にはちゃんと書ける学会学術誌としての体裁を備えつつ

  • 医学中央雑誌メディカルオンラインの検索に引っかかる
  • OTでは唯一のオープンアクセス
  • 会員外の方にも読んでもらえる
  • 投稿料が安い(掲載料は仕上がりで4頁までは一律7,000 円,5頁以降は1頁毎に2,000 円)
と、研究結果を拡散する要素もちゃんとあります。まぁ弱小学会の学術誌になんて誰が投稿するもんか、と思われるかもですが、論文はデータベースで検索するご時世です。良い研究であれば検索にヒットするでしょうし、その後オープンならなおさらリーチしやすいわけであります。

ですが最も良い特徴は査読の対応が素晴らしい」に尽きます。教育的査読というのはもちろん、査読は現役で論文を書いている新進気鋭の皆様にお願いしていますので、吉野家じゃないですが、早い!親切!適度!に行われていますと思います。

査読者の皆様が普段から査読を受ける立場にもありますので、どの程度コメントすればいいのか、ということはよくお分りです。査読者のおかげで多くの論文が始めの投稿よりブラッシュアップされています。

一応、「臨床」と謳っているので、臨床に本当に、全く、ちょっとも関係のない論文の投稿はお断りしたことはありますが、基本的には学会自体が「無宗教」を売りにしていますので(笑)、臨床に関連したテーマであればOKです。バラエティに富んだテーマが並んでいます。

あと身内感満載だよね、とのご指摘をいただくこともありますが、最近は多方面からご投稿いただいてますし、こちら的の門戸はこれ以上ないくらい全開でございます(笑)

難点を挙げるとすれば、やはり細かい日本語のチェックや、引用文献などの体裁など、編集作業は基本的には投稿者ご自身にお願いしています。しかし出版社の後ろ盾がない多くの雑誌は、みなさん同じ条件かと思います。でも仕上がりは地方紙のような手作り感はほぼ無く、かっこいいです(笑)



あと紙媒体は一切ございません。ですが、これも最近は問題ないでしょう。

発刊から四年目と少し落ち着いて来ましたので、今年は少しだけ広報もしていきたいと思います。よろしくお願いします。

最後まで読んでくださりありがとうございました.


2017年4月20日木曜日

事例報告なめんな

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諸事情により,4月末まで娘2人と東京で3人暮らしをしております.修行僧と呼んでください.tomoriです.



さて,昨日は作業療法臨床実践研究会さんでお話させていただきました.頂いたお題は事例報告.

1990年代のEBMの襲来により,事例報告の価値が明らかに低くなりました.「事例報告」というだけで,研究として価値はないと判断される.それは大きな勘違いです.

そもそも事例報告はエビデンスレベルや効果研究の土俵で評価されるものではありません.事例報告の本来の目的は,より良い最先端の治療を求めて臨床現場で試行錯誤で行われる仮説生成のためのプロセス,つまり「質的改善研究」と言われています(斎藤清二).効果研究としての価値は低いですが,臨床において,自己成長や教育などにはうってつけの方法とされています.


質的改善研究というと,学生や新人の指導とかをイメージするのですが,違います.OTは専門職として一生べ勉強せなあかんので,自分自身にまず当てはめる必要があります.いや私は研究者です,という方もいらっしゃるかと思います.しかし近年の研究を見ていると,清水の舞台から飛び降りるかのように短絡的にRCTを実施して,実験群と対照群の間に差はありませんでした,というなんとも後味悪い研究も少なくないですし,これって臨床でどう使うんだろう…と臨床と接点が見えない「研究のための研究」もよくあります.これって,研究でもっとも重要な仮説生成のプロセスで,事例をすっ飛ばしているからこそ生じる現象ではないのかと個人的に思うところもあります.

もちろん他者の研究にどうこう言いたいわけではないのです.ただボクが言いたいことは,

事例報告なめんな!

ということです(笑) もちろん巷には,事例で言えるレベルを超えた内容の報告,仮説生成につながっていない浅い内容の報告,本来教育指導で行うはずが研究と履き違えてよく分からなくなっている報告などなど.なめられてしまうものも多いです.そうならないために,今回ボクは目的,方法,結果,考察と陥りやすいピットフォールと回避方法について説明しました,つもりです(伝わらなかったかもですが…) 

事例報告は臨床家や学生さんが超多忙な時間の中で行われたものであり,指導したり査読したりする立場の方は,頭ごなしに「価値なし」とかじゃなくて,一定の敬意をもって「質的改善研究」として読み込み,適切なフィードバックを行う必要があると思います.そして,執筆する側も,上記の中途半端な内容ではなく,何が目的か読み手に明確に伝わるような書き方をしてほしいものです.



そして,久々に One more thing…で(笑),「事例報告の逆襲」というスライドを何枚か足しました.これから事例報告の価値というか位置づけが変わってくると個人的には思っています.

RCTに価値があるのは,ある前提が存在するからです.

その前提とは,母集団の多くからデータをとることができないという前提があるので,母集団からサンプリングされたごくわずかな人でデータを取り,推定的統計によって母集団もきっとそうだろうと一般化を予測しやすいRCTが,偶発性を排除できない事例報告よりも価値があるわけです.またジャーナルには紙面に限りがあるので,事例報告よりは結果を一般化しやすいRCTに価値があることになります.

ここまで言えば分かると思いますが,この前提がおそらく変わります.近年,ウェアラブルデバイスの開発競争は目覚ましいものがあり,これによって多くの人からデータをクラウド上に吸い上げることが可能となり,大多数のデータを集めることができるようになります.また吸い上げられてくるデータから,臨床上意味のある最小変化(MCID)やら,正常値,異常値のカットオフなどを設けたり,ベイズなどの確率論を応用して使えば,1事例や少数例であっても,効果について今以上に詳細な検討ができるでしょう.さらに,ビッグデータをもとに模擬的にRCTを行い,因果関係をいくつか検証することもできます.この模擬的なRCTによって効果に影響している因子を特定してから前向きの本番RCTを行うことで,リスクを清水寺から2階建てくらいまで減らすことが出来るかもしれません(笑)

もちろん個人情報やら倫理的問題やら,データの維持管理やら,やらないといけないことは沢山あります.しかしOTはどの領域よりも先駆けて十数年前からやっています.

そうAMPSです.

OTって実はすごいんです(笑) でもAMPSのように有資格者のみ使えるようなものではなく,事例報告のように気張って書き上げるものでもなく,普段のナチュラルな臨床データをクラウドに上げることで,作業療法研究を大きく前進させることができるでしょう.

このように,RCTの価値を決める前提条件がIoTによって激変することで,RCTと事例報告は今以上に相補的な関係に変わってくるでしょう.相補的というのは,「両方とも必要」ってことです.



作業療法は事例と共に歩んできた実学です.東に子どもがいれば行って看病をし,西に疲れた母あれば行って稲の束を負う,みたいな,その時分の社会情勢に合わせた支援を行ってきました.健康高齢者,発達,就労,などと新たな領域で作業療法の知識と技術を使った支援が行われています.次に作業の問題で困っている人はどこにいるのでしょう.そして作業療法は何ができるのでしょう.その最前線の事例報告も期待しています.

最後まで読んでくださり,ありがとうございました.
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