2013年3月25日月曜日

作業に焦点を当てることと機能訓練の関係について

Clip to Evernote
昨日は琉球OTさんのいびきで眠れませんでした.tomoriです.

さて,作業に焦点を当てた作業療法とはなんでしょう... この言葉が意味するもの,解釈は人それぞれなのが現状です.ただし,この言葉は誰かが新しく考えたものでもないし,そもそもOTに古くからある考え,実践されてきたもの,とも言われているので,改めて定義付ける必要もないと思っています.ここでの見解はあくまで僕個人の解釈です.

AMPSやOTIPMの開発者であるFisherは,最新の論文で以下のの3つを定義付けています.
 1) Occupation-centered
 2) Occupation-based
 3) Occupation-focused

概説として,1) は作業の観点を持つこと,作業的存在について考えることなど,作業療法のコアな考え方や視点であり,その実践方法が,2)や3) という位置づけだそうです.2) は人が作業に従事することそのものを通して評価や介入すること.3)は人のすぐ近くの作業自体に焦点を当て(注意を向け),評価や介入をすること.だそうです.3) が僕の読解力ではよくわかりませんでしたが,proximal(基部に近い), immediate (目前の)な作業にfocusするということで,作業ができるようになるために話をしたりするというのが3),作業そのものを通して直接的に評価や介入をするというのは2),という違いでしょうね.まあいずれにせよ,機能面の改善に焦点をあてるようなら2)でも3)でもないと繰り返し強調されていました.

ただ僕は思うんです.いや多くの人がそう思っていると思います→ 機能訓練も必要だと.作業ができること,その目的達成のために機能訓練が近道だと判断されるならば.要は作業ができること,という1)の考えをしっかりと持ったOTならば,上手に「意味のある」機能訓練を実施しています.

侍OTさんは,課題指向型訓練とTransfer package を用いて,クライエントのSTEFが20点から80点に,MALのAOUが0.35から4.08に向上しました.それだけでなく,「まだまだ病気になる前と比べたら全然だけど,気がつけば自然に右手を使っている」「これから家に帰れば,難しいことがまだまだ起こると思うけど,難しいことが起こっても,これまで解決してきたように,頭と体を両方使えば解決できると思う」「この入院でリハビリの考え方が変わった.どうすれば自分の身体をしっかり使いながら楽しい生活ができるのか.その方法がわかった」と述べていたようです.

作業ができること,という目的からCLやOTがそれやすいので,機能訓練より,2)と3)が推奨されるのであって,作業ができることという目的からそれなければ機能訓練もありでしょう.侍さんの事例は,その良い例だと思います.ただ機能訓練も,最近では課題指向型が推奨されつつありますので,ベッドで寝かせてROMというPassiveがメインな介入は再考の余地があるようです.

Tromblyは,1995年のEleanor Clarke Slagle Lectureで,運動機能障害とADLの相関が31%で,ADLの69%は運動機能障害以外できまると述べています(引用が明確に示されていませんが).でもまあ当然ですよね(笑)

鈴木誠先生も,機能訓練と運動技能訓練の両側面からのアプローチが必要であるとしています(行動リハビリテーション 第 1 巻 2-15 2012; 日常生活動作訓練について考える).そもそも人は何か作業をするには,その作業から要求される基礎的能力が必要ですよね.それを「機能的閾値」として,それを境に自立,非自立の確率が異なるとしています.ただ機能訓練だけ行えばよいわけではなく,特に中途障害になった患者さんなどは動作学習に新たな「新たな行動連鎖」を再学習する必要があり,それには直接的な動作練習が必要であると述べられています.

もちろんMETsみたいに,各活動で機能的閾値が明確に決まっているわけではないですが,考え方としては面白いなと思っています.そしてOTが「作業に直接的に練習できないから,それが早くできるようになるために機能訓練をしている」という意識を持っていて,それを最初にクライエントにちゃんと説明していれば,作業を早め早めに導入できるじゃないでしょうか(希望的観測).

さらに機能を生活にどう汎化させていくのか,それを具体的にどうやるのか.それはやはり竹林さんたちの課題指向型訓練とTransfer package(TP)が参考になりますね.特に上肢機能を生活でどう使うかクライエントと一緒に考えていく戦略のTPは今の作業療法に非常に必要だと思っています.自分の回復期での臨床のころもそうでしたが,機能訓練を実施して,ADLで実際的に介入もしましたが,どこかセラピスト主導で,クライエント自身の考える力をつけるような関わりはしていなかったなぁと反省しています.

それを証拠に,竹林さんたちの介入はたった2週間ですが,半年後,1年後と機能の向上,MALの向上(生活での手の使用頻度など)が見られます.これって素晴らしいことですよね.まだ論文にはなってないようですが,健康関連QOLも改善が見られるとか.たった2週間の集中的介入で,クライエントが自分自身で健康になっていく,まさにMary Reillyの有名な仮説 "Man, through the use of his hands, as they are energized by mind and will, can influence the state of his own health." を実証しているスゴイことだと僕は思います.本人は全く知らないけど(笑).

つまり僕は何が言いたいのか.医療は日進月歩.いまは機能訓練と言えど,もはや以前のように機能を向上させる機能訓練ではなく,クライエントの生活をどう改善するのか,向上した機能をどうやって生活に汎化させるのか,臨床データに基づいて検証がなされていますし,セラピストも機能訓練を冷静かつ真摯に考えています.前の機能訓練とは違います.

サッカーの練習で,リフティングの練習だけしてもうまくならないし,実践だけやってもうまくならないですよね.なんかそんなのが重量挙げの研究でもあったなぁ...


最後まで読んでくださりありがとうございました.

0 件のコメント:

コメントを投稿

Related Posts Plugin for WordPress, Blogger...