2015年3月11日水曜日

「報酬」がついた生活行為向上マネジメントが今後どうなるか予測してみた.

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もともと読書好きの長女ですが,学校で「本を沢山読んだ人に賞を与える」というシステムが導入されたために,数を稼ぐためにペラペラの漫画ばかり読むようになって,ややキレ気味のtomoriです.


いま医学書院から出版予定の竹林さんの著書「行動変容を導く上肢機能訓練ー脳卒中上肢麻痺に対する訓練戦略」の分担部分(目標設定)を執筆中です.先日,寝ぐせを直そうと頭をゴシゴシしてたら,首を痛めてしまい,3日間何もできなかったので,昨日から残業です(笑)



1. 目標設定と動機付け

さて,目標設定には,最初の方向付けと成果検証という側面があります.成果を検討する際,行動変容を重視したアプローチでは内的動機付けを意識した関わりをします.つまり,内的動機付けでは,その行動をしていること自体が報酬(有能性,行動の熟達など)になりえるかどうか重視します.フローとも関連しています.(つまりはうちの娘が読書を楽しんでいる時です)

一方,外的動機付けでは外部から報酬(評価,褒める,賃金など)を与えることによって,行動を促します.外的動機付けは,確かに行動変容を促すこともありますが,さまざまな研究によって,ネガティブな面が大きいことが示唆されています.第一に,報酬を得る間はその行動を頑張って継続するけども,報酬がなくなったら一気に行動に興味がなくなります.第二に,それが倫理的に反することであっても,報酬を得るために最短の方法を探そうとする,ということです.(うちの娘がペラペラな本を読むようになったことです)

2. 動機付けと診療報酬の関連

この報酬の仕組みって,リハの仕事と多いに関係あるんですよ.例えばリハにおける単位制の導入です.あの制度の本質は,これまで何名も同時進行で患者さんみてて大変でしたね,マンツーマンの時間を補償するので,じっくり創造的なリハビリテーションを展開してくださいね,ということだったと思うのですが,あくまで印象ですが.特に介護保険領域においては,単位を稼ぐために更にベッドに並べて寝かせて順番に同じような訓練をしている人が多くなってないですか? 稼ぐためには個別性は邪魔です.報酬を追求する経営視点でいえば,誰でも同じものをたくさん提供するほうが効率良いですから.プラットフォームの端から端まで患者さん寝かせて同じROM訓練をし,マシンの負荷量を利用者に合わせることが個別性の尊重です,という具合が最も儲かります(笑) ※これは現場で汗水流している人を責めているわけではありません.そういう仕組みを作っている人は非難しています(笑)

3. 報酬がついた生活行為向上マネジメントの今後

それに派生して,僕が今危惧しているのは,生活行為向上に点数がついたことです.言い換えると,それまで療法士が自分自身の使命感や有能感をもって頑張ってやってきた「作業に焦点を当てる」という,内発的動機づけに基づく行為に,点数がついたということです.これからは利用者さんの生活を見るより,点数を取ることが目的になるでしょう.よって,これまで患者さんのためにと思って時間外にでも会議を開いてきた人も,時間内にどうにか収めよう,1回やればいいや,ということになるでしょう.あの患者さんは対象外だから,作業に焦点を当てた介入するのはやめようということになるでしょう.これまで「作業に焦点を当ててない」人たちも当てるようになるシステムだとか言われてますが,そんなはずはありません(笑) 点数を稼ぐことが目的なので,より個別性に対応しないですむマネジメントが横行することでしょう.短い歴史をみても,デイケア,デイサービス,訪問,サ高住… 全てそうでしたから(笑) ADOCも,より効率性のために使われるようになるんかなぁ...

とかく,生活行為を算定する予定のとこの管理者は,部下が報酬を意識せずに生活行為マネジメントを実践できるマネジメントをしてくださいね.その補償なしには,このシステムはほぼ成功しないでしょう.

あ,この辺を上手くやっているのは,原田伸吾くんたちのデイサービス「つむぎ」です(注:デイサービスで生活行為は算定できません.算定できなくても彼らはちゃんとやってます) 彼らのデイには「押し付け」がありません.スタッフ,利用者の内的動機付けに基づいて,様々な作業が展開されています.その場にいる全員が作業を楽しんで,笑顔が絶えません.もちろん開設から定員はすぐに埋まり,規模も拡大中だっけな(こんな話はいらんかww).僕も友達多いほうだと思うけど,彼ほどバランスよくマネジメントしてる人は見たことありません.まだ広報はしてないっぽいのですが,噂では近々に福岡の勉強会でしゃべるらしいのでチェックしてみてください.たぶん病院に所属する方でも参考になると思いますよ.


4. 楽しく作業療法をしよう!

何度でも繰り返します.僕らADOC projectは,「クライエントと作業療法士が楽しく作業療法をすること」を重視しています.それは,いったん自分たちのしていることが報酬に左右されてしまうとクリエイティビティが下がってしまう,すなわち作業療法の一番の良さが奪われてしまうことと等しいと思っているからです.

報酬(給料など)は大事です.でも最も大切なことは,クライエントと作業療法士が楽しく生きるために,頭と体と時間を使うことです.かのReillyも言ってますが,そこからブレてはいけません.専門職がクリエイティビティになれば,ちゃんとそれに見合った報酬はついてきます(たぶんww 原田くんにように).報酬先行では,クリエイティビティが働きにくい→誰でもできる仕事→コモデティ化→結果報酬も増えません(笑)この辺は,「士」がつく職業のコモディティ化 でも書きました.



あーーー,せっかく早起きしたのに執筆進んでない〜(笑) これはタカシくんのプレッシャーがあるから外的動機付けが強い作業なんよね〜(笑) まいいや(笑) 

ではでは.これにて.
最後まで読んで下さりありがとうございました.


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